ご無沙汰になりました。ここの所、2つの小説に時間をとられていました。1つは、昨年から執筆していた『錯覚の権力者たち ―狙われた農協―』です。最終校正が終わり今月中には出版となります。もう1つは、某所から依頼された『渋沢翁からの贈り物 ―チームで大事なことは、じっちゃんの『いろはかるた』が教えてくれた―』です。こちらも、先週、初稿を脱稿したところです。これらの小説が出版されたら、このHPでお知らせします。
 
さて、大和の寺めぐりVer3を途中まで書いたのですが、世の中、コロナで紀行文のエッセイはやや気が進まないので、今回は、新たな視点での書き出しとなりました。
 
思えば、昨年3月2日に、この「林に棲む」のエッセイでも取り上げたリオのカーニバルから帰国した頃から、コロナの猛威が全世界を駆け抜け、今に至っても、その傷は収まるどころが、より、深くなっています。
 
再チャレンジ第1弾は、「コロナとの暮らしの中で」としました。
 
<コロナ禍での生活は、シンプルな1人生活の楽しみ方を教えてくれました>
 
その楽しみ方を少し紹介します。ボクは基本的に、1日の仕事を1.5時間+20分をワンセットとして、それを3セット繰り返す日々を送っています。セットの中身を同じにすると飽きてしまうので、たとえば、セットAは小説執筆、セットBは資料調べ、セットCは小説の勉強などと、それぞれ、異なった内容にしています。
 
仕事が終わると、ビーフジャッキーなどを肴にDewar’sのハイボ-ルを飲み、良い気持ちになったらサイモン&ガーファンクルなどをかけながら、マッタリと空想の世界を旅するのです。天気が良ければ、このセットに1時間ほどの散歩(根津神社、谷中墓地、上野公園など)+谷中界隈か芸大の前のオープンカフェで、コーヒー&読書&人間観察が加わります。
 
この基本メニューに加え、月2回は、その昔、札幌に住んでいた頃を思い出し、事務所のベランダで1人ジンギスカンです。ベランダからはスカイツリーが見えます。近所のサミットで買ったチリ産のオーガニック赤ワイン(1380円:フルボディポクうまい)とリオで買ったサンバのCDを流しながらのランチです。
 
また、緊急事態宣言が発出されていない時は、月に2回ほど、16時頃から、コロナ時は常連しか入れない谷中の行きつけの居酒屋か御徒町駅前の吉池9階の吉池食堂で1人飲みです。この間に、編集者や関係している会社・団体との打ち合わせがWeb会議を入れて、週に1回か2回あります。
 
このような仕事&時間の過ごし方のユニットが決まると、週末に、これらのユニットを組合せた翌週のスケジュールを大まかに立てます。翌週の月曜日から金曜日までは、この作成したスケジュールを基本にして、ユルーイ気持ちでこなすのです。
 
このやり方のメリットは、「さて、何をするか」って考える手間がないことです。さらに、コロナ禍の仕事と時間の過ごし方を冷静に見つめれば、物を書く&読む、散歩&カフェ、食&飲むに絡む行動は、ほとんど、1人なのです。このような生活を1年近くしていたら、ある時、突然気がついたことがあります。
 
それは・・・・・
<1人空想世界で遊ぶ>
・・・・ってことなのです。

この極意をつかめば、コロナ生活も、また、「おつ」なものになります。そのいくつかを紹介します。

その1:谷中のサクラホテルのカフェ
谷中・根津・千駄木は、なぜか外国人に人気があるらしく、このカフェは、外国人滞在用のホテルの中にあります。この種のホテルは、他にもあるらしく、そこでは、週に1回、金曜日に外国人の集まり会があり、その会には外国語の勉強をしたい日本人も来るらしいのです。
コーヒーを飲んでいた時に聞こえた、日本人3人の会話・・・
「外国人も適当よ。結構、女の子目当てのナンパ外国人もいるしね。ラテン系やイタリア系は、結構、その手が多いらしい」
「それは、どっちもどっちだよ。こっちで友達になって、相手の国に行ったときに案内にして貰おうって魂胆の女性も結構いるしな」
だって・・・・・

その2 芸大前の上島カフェ
この店ではテラス席に座り、コーヒ-を飲みながら、楽器を背負った芸大の学生さんを眺めているのだが、どう言う訳か、横のテラス席から韓国語の会話が何回か聞こえたり、また、ある時は、同じ日本人なのに、なぜか、先生と生徒らしき院生が英語で会話していたり、芸術ってのは、ボクみたいな売れない作家では理解しがたい世界なのかもしれない・・・・

その3 谷中の行きつけの居酒屋
この店では、同席した顔見知り常連客と軽く挨拶をかわすが、各自、マイペースで飲みます。お互い仲が悪いわけではないのですが、一緒に飲むのは、この店で会った時のみなのです。なぜか、いつもこのスタイル、これが心地良い距離感覚なのです。

その4 御徒町吉池食堂
広い吉池食堂では人間観察です。たとえば、同級会と思しき老人グループ、仲良しおばさんグループ、会社関係の二人、彼氏と彼女などを観察しながら、軽い酔いに任せ、海原にプカプカと浮かぶ感覚で、それぞれの人生を物語風に想像するのです。
○同窓会老人グループで、頑張って場を仕切っているおじいさんの家を出るときの会話
 「あんた、同窓会だからって、年なんだから、張り切って飲みすぎないでね」
 「うるせいな、お前は。人が出かけるときにガタガタ言うな」
  ・・・・・・・
○仲良しおばさんグループの会話
 「ねえ、ねえ、知ってる。○○さんの子供、東大に入ったんだって」
 「いいわね、あそこは旦那が優秀だからね。それに比べ、家の旦那は××だからね」
 ・・・・・・・
○会社関係の二人
 「○○、ここの寿司は旨いぞ・・・」
 「そうですね。部長、旨いですね・・・」
 「そうだろ。この栃尾の油揚げも美味いぞ、○○」
 「ソウデスネ、部長、これも美味いですね。さすが部長、よい店を知ってますね」
 「まあな・・・」
○彼氏と彼女の会話
 酒も飲まずに、ただ、モクモクと食事をしている二人。
 「・・・・・・」

 人にはそれぞれの人生があり、その人生の結果を背負いながら、コロナ禍での過ごし方を模索しているのです。

 
谷中のカフェ
 
 
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